臨床検査における偽陽性について

今回は検査結果の偽陽性についてお話します。

病気があれば100%陽性、なければ100%陰性となるような検査が理想ですが、現在行われている臨床検査にはこのような検査はほとんどなく、病気があっても陰性になったり、病気がなくても陽性なったりすることがあります。

たとえばある感染症の診断をするための検査を行うと、感染しているのに検査が陰性になる偽りの陰性(偽陰性)や感染していないのに検査が陽性になる偽りの陽性(偽陽性)の結果になる人がいます。

検査の偽陽性や偽陰性はさまざまな原因によって起こります。
・病気の特性や感染後の時期
・検査の特性(交差反応、非特異反応)
・検体採取・取り扱いの不備
・検査上の不備

臨床検査では、技術上の偽陽性、偽陰性が生じないようさまざまな対策を講じています。適切な基準を満たす検査施設で、性能を担保された機器・試薬を用い、専門職である臨床検査技師が検査を担うことに加え、患者さんの試料とともに陽性・陰性結果になるようあらかじめ作られた検査精度保証用試料を同時に分析することなどが対策として行われています。

当院で行っている検査で偽陽性が出てしまうことがある検査にスクリーニング検査の梅毒検査(RPR法)とHIV抗原・抗体検査などがあります。

梅毒のRPR法検査はカルジオリピン-レシチンというリン脂質に対する抗体を検出しています。リン脂質は細胞質などの成分として生物界に広く分布しています。そのため、梅毒以外の疾患でもリン脂質に対する抗体が産生され、反応が陽性となることがあります。これを生物学的偽陽性といいます。

生物学的偽陽性を呈する代表的な疾患としては、膠原病、慢性肝疾患、結核やHIV感染症などがあり、他にも妊婦や高齢者などでも偽陽性になることがあります。

またこの梅毒の検査は乳び検体で正しい結果が得られないことがある、とされています。
乳びとは血液中の中性脂肪があまり分解されず血液中に残り、その脂肪分の影響で検体が白濁して見える所見です。
乳びは食事から接種する中性脂肪(外因性脂質)が原因であること多いため、健康な人でも食事後ある程度の時間を置かなければ起こります。健康な人であれば、通常食後4時間程度でピークを迎え、その後徐々に低下していきます。

実際、当院でも乳び検体で梅毒RPR法検査が陽性、後日再検し陰性であることが多くあります。
HIV抗体検査は約0.3%で偽陽性と出る場合があり、妊婦さんや、抗原病、血液悪性疾患を有すると偽陽性率は高くなります。

当院では、偽陽性の可能性がある検査結果の場合は再検査や精密検査を行って本当に陽性なのか偽陽性なのかを確認しています。

感染すれば100%陽性、感染していなければ100%陰性という検査は今のところ存在しません。COVID-19のPCR検査も検体の採取方法や時期によって本当は感染していても陰性に出てしまうなど、100%正しい結果は出ないといわれています。

このようなことも踏まえながら検査結果を見ていただければと思います。

日本臨床検査医学会 https://www.jslm.org/committees/COVID-19/index.html

新型コロナウイルス関連情報特設サイト https://jeaweb.jp/covid/index.html

仙台検査部 羽藤

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