卵子の活性化とは?

成熟した卵子に顕微授精を行っても受精しない、または受精率が低い場合があります。これを受精障害と言い、様々な要因が考えられるのですが、その原因の1つが顕微授精後の卵子活性化障害です。

通常、卵子に精子が侵入すると卵子を活性化させる因子が放出され、卵細胞質内の細胞小器官よりカルシウムイオン(Ca2+)が反復的に放出されます。この卵子内のCa2+濃度の上昇と下降が繰り返されることによって、卵子が活性化され受精に至ります。しかし、精子に何らかの問題があり、顕微授精を行っても卵子内のCa2+濃度が上昇せず受精に至らないことがあります。

そのような場合に用いられるのが…

人為的卵子活性化(artificial oocyte activation: AOA)

と呼ばれる技術で、顕微授精を行った方が対象の補助技術となっております。

これは、顕微授精後の卵子を特定の試薬を含んだ培養液に浸すことにより、細胞内のCa2+の濃度を増加させ、受精率の改善を試みる技術です。

卵子の活性化にはいくつか方法がありますが、当院ではカルシウムイオノフォアという薬剤を用いて活性化を行っています。

卵子活性化を行っている図解

2016年に発表された研究では、AOAを行わなかったグループの受精率が46.67%であったのに対し、AOAを行ったグループの受精率が65.93%、と有意に高い数値を示したという報告があります。

また、AOAを施行することにより、胚発生が改善されるとの報告もあります。

2020年に当院の服部が発表した論文では、先天異常率や児の成長過程における有病率について、AOAを行わなかった症例と比較して差が認められなかったという結果が出ておりますので、安心してご利用いただけます。

なお、2022年4月の保険適用化に伴い、このAOAにも保険が適用されております。当院では、前回の受精率が30%以下の方や受精しなかった方を対象としております。問診の際に先生とお話をして頂き、必要と判断した場合に行っております。また、円形精子症や精巣内精子を用いた顕微授精の方にも卵子活性化を行う場合があります。

活性化について気になる方は問診の際に医師にご相談ください。

京野アートクリニック盛岡

山内 太陽

参考文献

[A control study of artificial oocyte activation in the same period]

D Y Hao, R Zhang, X Zhang, C Y Shen, Y Yang, W B Wu, Y L Liu, J Liu, J R Zhang, X L Wang

Chin.Med.J. Zhonghua Yi Xue Za Zhi. 2016 Nov 22;96(43):3489-3493.

A preliminary report of successful cleavage after calcium ionophore activation at ICSI in cases with previous arrest at the pronuclear stage

Ehab Darwish, Yasmin Magdi

Reprod Biomed Online. 2015 Dec;31(6):799-804.

Obstetrical and Neonatal Outcomes of 3,028 Singletons Born After Advanced ART Techniques: Ejaculated Sperm Intracytoplasmic Sperm Injection, Artificial Oocyte Activation, in Vitro Maturation and Testicular Sperm Extraction

Hiromitsu Hattori, Yuko Atsumi, Yukiko Nakajo, Nobuya Aono, Masae Koizumi, Mayumi Toya, Hideki Igarashi, Koichi Kyono*

FERTILITY & REPRODUCTION VOLUME 3 • NUMBER 2 • JUNE 2021 • 1–10

 

 

京野アートクリニック盛岡

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