保険診療の疑問〜皆様からよくいただく質問〜

2022年4月以降、保険診療についての質問をよく頂きますので、いくつかまとめてお知らせいたします。

《保険診療への移行について》

① 2022年3月以前に自費で採卵し凍結胚があります。保険で移植できますか?
→条件を満たせば保険での移植は可能です。当院に凍結胚がある方は、まずはお話を聞きに受診してください。

② 他のクリニックで採卵し、凍結した胚があります。転勤によりそちらに通いたいのですが、保険診療でも凍結胚の移送はできますか?
→できます。移送の準備には手順がありますので、まずは受診いただきご相談をお願いします。また、保険診療での不妊治療歴を確認する必要があるため、転院の場合は必ず紹介状等をお持ちいただきますようお願いいたします。

《年齢制限・回数制限について》

③ 先日誕生日を迎え、43歳になりました。もう体外受精はできませんか?
→体外受精を保険診療で行う際には治療計画を作成する必要があります。初回の治療計画を作成するときに43歳以上の場合、保険診療で体外受精はできません。自費診療の場合は43歳以上の方でも体外受精をおこなっております。

④ 現在41歳です。他のクリニックで保険での移植を3回行いました。京野アートクリニックに転院した場合、また保険での移植を行えますか?
→保険診療で行える胚移植の回数は治療開始の時点で40歳未満の場合は6回まで、40歳以上の場合には3回までとなっております。これは治療する医療機関が変わっても引き継がれますので、初診の際にはこれまでの治療歴を必ずお聞きしております。万が一虚偽の申告を行った場合、保険者から医療費の支払いがなく、全額患者様の自己負担となりますのでご注意ください。

⑤ 保険診療で移植を行い妊娠しましたが、10週で流産となりました。移植可能な回数はリセットされますか?
→保険診療で行える移植の回数は1子ごとに6回もしくは3回までとなっております。出産した場合や、12週以降に死産となった場合は、次の児の妊娠を目的とした治療でさらに6回もしくは3回行うことができます。ただし43歳に至った場合には保険診療での生殖補助医療は行えません。

《薬剤について》

⑥ これまで自費診療の際に使っていた薬剤は、保険診療でも用いることはできますか?
→残念ながら、これまで使用していた薬剤全てが保険適用となった訳ではありません。一部使用できなくなる薬剤もありますが、保険診療の範囲でできる限りのことは致しますので、不安なことがあればお気軽にお話しください。

⑦ 移植の準備で薬剤を処方されました。誤って破棄してしまいましたが、もう一度処方することはできますか?
→薬剤を破棄・紛失してしまった場合、天災地変の他やむを得ない場合を除いて再交付した場合の薬剤の費用は患者様の負担となりますのでご注意ください。大事な薬剤ですので、大切に保管いただき、十分に気をつけてご使用いただくようお願いいたします。

《費用について》

⑧採卵1回行うのにどれくらいの費用がかかりますか?

→卵巣の刺激方法や採卵までの通院回数が定まっていないので正確な金額をお伝えすることはできません。また採卵手術の料金は、採卵できた卵の数により金額が変わってきます。基本的な点数(金額)を下に示しておりますが、採卵を行なった場合には卵子が取れなくても基本の料金はかかります。ここに取れた卵の数により加算がされます。なお、不妊治療においても高額療養費制度を用いることができますので、必ずしも窓口負担でお支払いいただく金額では無いことはご承知おきください。

診療報酬点数
(1点=10円)
3割負担 合計金額
(採卵術+加算)
採卵術 3,200点 9,400円 9,400円
加算 1個の場合 2,400点 7,200円 16,600円(9,400円+7,200円)
2個から5個の場合 3,600点 10,800円 21,200円(9,400円+10,800円)
6個から9個の場合 5,500点 16,500円 25,900円(9,400円+16,500円)
10個以上の場合 7,200点 21,600円 31,000円(9,400円+21,600円)

(2023年1月現在)

例)
・採卵したが卵子とれず→採卵術3,200点
・3個採卵できた→採卵術3,200点+3,600点
・6個採卵できた→採卵術3,200点+5,500点

《男性不妊の治療について》

⑨他のクリニックで精子が少ないと言われました。男性不妊も診てもらえますか?

→京野アートクリニック盛岡では男性不妊に対しての診療も行なっています。また、仙台院と高輪院には男性不妊の専門医師がいます。クリニック間で連携を行い、手術が必要な場合もスムーズに情報共有が可能です。

⑩男性不妊の場合も保険診療で治療を行えますか?

→保険診療で治療できます。精巣内精子採取術(TESE)を行うには適応がありますが、TESEで採取できた精子を用いて顕微授精を行えます。

《その他》

⑪不妊治療をしたいと思っていますが、夫は仕事が忙しく受診できません。夫は受診しなくても大丈夫ですか?

→保険診療で不妊治療を行う場合、ご夫婦で治療計画を作成し文書による同意を得る必要があります。初診時に妻のみ来院の場合、まずは妻の検査を先に進めてまいりますが、保険診療での不妊治療を行う場合には、妻の受診のみでは治療を開始できません。

⑫現在特定のパートナーはいませんが、将来のために卵子凍結を保険診療で行えますか?

→保険診療ではできません。将来のための卵子凍結を社会的卵子凍結と言い、医学的な必要性が有る場合の(若年のがん患者など)卵子凍結は医学的卵子凍結と言います。当院ではどちらの卵子凍結も行っております。
社会的卵子凍結は保険診療で行うことはできず、自費診療となります。医学的卵子凍結も現在のところ保険診療では行えませんが、助成金制度を使用できる場合もあります。

難しい用語も多く、なかなか理解しづらいこともあると思います。わからないことがあればお近くのスタッフにお気軽にお声かけください。
また、最近では他のクリニックからの転院の患者様も増えてきております。保険診療においては回数制限がある治療もあるため、これまでの保険診療での不妊治療歴確認のために紹介状等をお持ちいただくようお願いしております。転院希望の方はご留意ください。
保険診療において、保険点数は2年に1度、見直しがされます。不妊治療は保険適用となったばかりですので、今後適応等に変更が生じる可能性があります。変更があった際には患者様方にもお知らせしてまいります。

 

 

京野アートクリニック盛岡

医師部 石河 育慧

関連記事

  1. 精子のDNA損傷を調べることの有用性について

  2. 精液検査について

  3. 高輪院コラム「PRP療法・PFC-FD療法を用いた不妊治療の…

  4. 卵子、精子、受精卵、卵巣組織の凍結保存について

  5. 高輪院コラム「FTの特徴と術後の妊娠率」

  6. 男性不妊症ではない場合、顕微授精は必要ない?

PAGE TOP