令和4年4月から、不妊治療が保険診療でできるようになりました。そもそも保険診療とはどういう仕組みなのかご存知ですか?
現在、日本では誰もが何らかの公的医療保険に加入しています。これを国民皆保険制度と言います。1961年から始まったこの制度により、医療費の一部が税金や保険料等で支払われる為、患者さんの負担は軽減され平等に医療を受けられるようになりました。また、患者さん自身は受診する医療機関を自由に選択できます(フリーアクセス)。
欧米各国は公的医療保険制度は限られており、高い医療費が社会問題となっています。また、専門病院を自由に受診することもできません。
公的医療保険を用いて行う診療を『保険診療』、保険診療を行う医療機関は『保険医療機関』、保険診療を行う医師は『保険医』といい、健康保険法等に基づいて厚生労働大臣に対し申請・登録しています。
保険医療機関は保険診療を行った時の対価、つまり診療報酬を審査支払機関を通じて保険者(皆様が加入している医療保険)に請求しています。
患者さんは加入する医療保険料を保険者に支払い、国や市町村に対しては各種税金を支払っています。
保険者は国・市町村の負担金、事業所(勤め先)や皆様からの保険料を財源に医療機関に対して診療報酬を支払っています。つまり、皆様の支払った税金等によって保険診療は成り立っています。
医療行為一つ一つに診療報酬点数(金額)が定められており、これは医療機関が勝手に割増したり割引いたりすることはできません。
診療報酬点数は2年に1度見直されており、令和4年度の見直しで不妊治療が保険適用となっています。『タイムラプス』や『SEET法』等は未だ保険診療の対象とはならない先進的な医療として、保険診療との併用を認められた先進医療という制度に含まれています。
保険診療を行う医療機関・医師は療養担当規則という厚生労働大臣が定めた省令に則って診療を行う必要があります(もちろん医師法等の法律も守っています)。その中で、「厚生労働大臣の指導を受けなければならない」という決まり事があり、保険診療を正しく行うための教育的指導や、正しく行えているかを確認する指導を受けています。
このように保険診療は皆様に安心安全な医療を提供するための仕組みになっています。
4月から不妊治療が保険適用になったことにより、これまでと診療体制も変わり皆様にも様々な混乱を引き起こしてしまったかもしれません。私共も皆様により良い治療によって、より早く成果を得られるためには、何ができるのか、何を改善していけばよいのか日々精進しております。
何か疑問点がある際は、どうぞ遠慮なくお尋ねください。
京野アートクリニック盛岡
医師部 石河 育慧
参考文献
厚生労働省 令和4年度版 保険診療の理解のために
https://www.mhlw.go.jp/content/000962383.pdf