第11回日本がん・生殖医療学会①

2月12日から、第11回日本がん・生殖医療学会が開催されています。
当院からは4名が演題を採択されています。
どのような内容か、簡単ではありますが、紹介させていただきます。

①CAYA世代助成の妊孕性温存186例の実施報告(研究支援部 竹重勇哉)

CAYA世代というのは、Child(0-14歳)、Adolesent and Young Adult(15-39歳)、つまり小児、
思春期、若年世代のことを意味しています。

当院では2003年頃から妊孕性温存の実施を開始しており、これまで治療実施をした数は
186例になり、その詳細を報告したものとなります。

患者さんの背景を見てみると、

・初診時の平均年齢は33.8歳
・既婚者の方の割合は53.7%

どのような病気であったかという点で見ると

・乳がんが136例
・白血病などの血液疾患が29例

という特徴があり、この2つで全体の85%以上を占めています。

更に掘り下げて、乳がんの方への詳細を調べてみると

 

 

 

 

・平均年齢が35.5歳
・既婚率は60.3%

実施した妊孕性温存は
・受精卵凍結 68例
・卵子凍結 47例
・卵巣凍結 17例

実際に凍結保存物を使用して妊娠にチャレンジした方を見ると
・受精卵凍結を実施した方のうち29例が胚移植を実施
・15例が妊娠 8例が出産(2例が妊娠継続中)

という結果となっています。

乳がんは一般的に30代を過ぎてから発症する確率が高まりますので、
それと同じように患者さんの平均年齢もやや高い傾向にあります。

乳がんの標準的な治療の1つに、ホルモン療法というものがあり、この治療は5年や10年という
単位で行われ、その期間中は妊娠にチャレンジできませんので、これから凍結保存物を使用する
患者さんはどんどん増加してくるものと思います。

次に、血液疾患の方の詳細を見てみます。

 

 

 

 

・平均年齢が25.1歳
・既婚率が24.1%

乳がんと比べると大きく異なることが分かります。
血液疾患は若くして発症することも多いことが関係していると考えられます。

実施した妊孕性温存は
・受精卵凍結 7例
・卵子凍結 19例
・卵巣凍結 3例

実際に凍結保存物を使用して妊娠にチャレンジした方は1名おり、
凍結保存時20歳だった女性が卵子を融解して顕微授精で治療を行い、
これまで2人のお子さんを出産されています。

トータルで妊娠率を見ると51.5%(17/33)と高い値であり、当院の妊孕性温存
の有用性が確認されました。

また、妊孕性温存を実施した後のフォローアップの充実は今後求められることであり、
当院だけでなく様々な医療機関や行政と連携しながら実施していこうと思います。

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