ホルモンについて

みなさん、こんにちは。
今回は各ホルモンについて作用など詳しくご説明いたします。

ホルモン動態について

月経周期中、視床下部から分泌されるゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモン(GnRH)により、卵胞成熟、排卵という変化が周期的に起こります。視床下部から分泌されたGnRHは下垂体にあるゴナドトロピン産生細胞にはたらき、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます。FSHは卵巣にある卵胞を発育させ、LHは発育して成熟した卵胞にはたらいて排卵を促します。この間、卵胞はエストラジオール(E2)を分泌し、排卵後の黄体化した卵胞からはプロゲステロン(P4)とE2が分泌されます。E2は内膜を増殖させ、P4は分泌期変化を起こして受精卵が子宮内膜に着床しやすいように変化させます。

各ホルモンのはたらき

●FSH(卵胞刺激ホルモン):卵巣に働き、卵胞を発育・成熟させる働きがあります。卵胞期前半に高くなり、卵胞発育が進むと低下し、排卵直前のLHサージの時に軽度上昇します。黄体期になるとまた低下し、黄体期後半になると、次の卵胞発育を促進するため増加します。

また、FSHは閉経の5~6年前、無排卵、不規則な月経周期の症例では上昇します。FSHの値が上がるということは、卵巣予備能が落ちているということを意味します。さらに、卵巣予備能の評価に有効な検査として抗ミューラー管ホルモン(AMH)があげられます。AMHは前胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌され、その値は月経周期による変化が少なく卵巣内の卵子数をよく反映し、年齢とともに減少します。AMH値が非常に低い場合には早期の卵子枯渇による早発閉経の可能性があるため、積極的な治療を勧めるなどの治療方針決定に役立ちます。また、AMH値が高くなるに従い多胞囊性卵巣症候群(PCOS)の可能性が高まり、卵巣刺激法などにおいて卵巣過剰刺激症候群(OHSS)対策が必要となります。ただしAMH値は卵子数を評価するもので、卵子の質を評価するものではありません。

●LH(黄体形成ホルモン):成熟した卵胞成熟した卵胞にはたらき、残った卵胞を黄体化させる働きがあります。卵胞期後半のエストラジオールの上昇の結果、LHが分泌され(ポジティブフィードバック)、LHサージが引き起こされます。LHは通常、排卵期以外ではFSHより低値です。多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の場合はFSHに比べて相対的にLHが高値となります。

エストラジオール(E2):卵胞期前半では卵胞発育が緩徐なため、E2も低値を示しますが、卵胞期後半になると卵胞の発育が加速されるため、急上昇します。この高濃度のE2がLHサージを起こします。また、E2は子宮に働き、内膜を増殖させ、頸管粘液の分泌を高めます。

●プロゲステロン(P4:排卵後に卵胞が黄体化すると、この黄体からPが分泌されはじめます。P4は黄体中期にピークに達します。妊娠が成立するとこのピークが持続しますが、黄体の退縮に伴って低下します。増殖した子宮内膜を分泌期に移行させる働きがあります。

●プロラクチン(PRL):乳汁を分泌するホルモンです。排卵期、黄体期に上昇を認めるため、月経中に測定します。妊娠以外の時期にPRLが高くなることを高プロラクチン血症といいます。その原因は下垂体性PRL分泌亢進症(プロラクチノーマ)や機能性高PRL血症、甲状腺機能低下症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、薬剤性(一部の抗潰瘍剤、制吐剤、降圧剤、向精神薬、抗うつ剤、経口避妊薬を含むエストロゲン製剤)などがあげられます。PRLが高値となると乳汁分泌や、月経異常(黄体機能不全、稀発月経、無月経)を引き起こすこともあります。

●テストステロン(T):副腎や卵巣で分泌されます。卵胞が発育するのに時間がかかってなかなか排卵しない排卵障害がうたがわれる場合に検査をおこないます。多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の診断に有効です。

このようにホルモンごとにはたらきは異なりますし、月経周期による変動のしかたも大きく異なります。そのため検査目的や検査時期によって検査項目は異なります。

当院では初診後にまず月経中、黄体期のホルモン検査を実施し現在のホルモン状態を把握します。その後治療方針によって、適宜ホルモン検査を実施しています。特にARTの治療周期では採卵や胚移植のタイミングを予測するために、ホルモン検査は大変有効な検査のひとつです。

検査項目について不明な点などあれば、採血のときなどお気軽にスタッフまでお声がけください。

参考文献
今すぐ知りたい!不妊治療Q&A
編集 久慈直昭 京野廣一
インフォームドコンセントのための図説シリーズ 不妊症・不育症
苛原 稔 編

                         仙台検査部 深田 昌代

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