透明帯開孔法 [Assisted Hatching(アシステッドハッチング):AHA]とは?

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透明帯開孔法(以下、AHA)、という言葉は聞いたことがあるでしょうか?

凍結融解胚移植をしたことがある方は聞きなじみがあるかもしれませんね。

今回はAHAについてお話しいたします。

そもそも透明帯って何?と思う方もいらっしゃると思います。

透明帯は卵を保護する殻のようなもので、受精後初期の成長(培養3-4日目まで)に必要です。

成長が進み胚盤胞となった受精卵は、透明帯から脱出(孵化)し、着床します。

受精卵が透明帯から脱出(孵化)する様子の画像

この過程は受精後5~6日ころ自然にみられます。

しかし、透明帯が厚い場合や、胚凍結によって透明帯が硬化する場合があり、受精卵の力のみでは脱出しにくい場合があります。

そこで、孵化を補助するためにAHAを施行します。

AHAとは、卵が透明帯から脱出しやすいように透明帯を薄くしたり、一部に大きく穴をあけたりする方法です。

どのように透明帯に穴を開けるかと言いますと

  1. 透明帯に直接針を刺して一部切開をする機械的な方法
  2. 透明帯に酸性溶液を用いて透明帯を溶かす化学的な方法
  3. 透明帯にレーザーを用いて透明帯を一部開孔するレーザー法

上記の3種類の方法があり、当院では受精卵への影響が最も少なく安全に行えるレーザー法で行っています。

AHAをおこなっている画像

AHA後の写真(赤丸:レーザー照射箇所)と培養後の写真(孵化している卵)

過去の論文で、AHAは胚移植を複数回行っても着床しなかった症例に対して、着床率や臨床妊娠率を向上させるということが報告されています。

また、2019年の受精着床学会で当院の中村が発表したデータでは、AHAの有無で双胎率に影響がないことも示されております。

AHAはその有効性が認められ4月から保険適用となりました。

2021年の当院の凍結胚移植における妊娠率は46.3%(国内平均34%)でした。

胚移植件数は約550~600件で、そのうち97.9%の方がAHAを施行しておりました。

当院では主に凍結胚移植の方を対象に施行しておりますが、新鮮胚移植の方にも施行することは可能で、ご希望の方は問診の際に医師にお話しください。

胚移植時にAHAを検討の際は、ぜひ参考にしてみてくだいさい。

京野アートクリニック盛岡

培養部 及川未来

 

参考文献

・Yujiang Wang, Chuangqi Chen, Jiaying Liang, Lin Fan, Dun Liu, Xiqian Zhang and Fenghua Liu (2021)A comparison of the clinical effects of thinning and drilling on laser-assisted hatching. Lasers Med Sci 37:1-9

・Yuji Endo, Shingo Mitsuhata, Momoko Hayashi and Yoshitaka Fujii (2020) Laser-assisted hatching on clinical and neonatal outcomes in patients undergoing single vitrified Blastocyst transfer: A propensity score-matched study. Reprod Med Biol 2021;20:182-189

・Mohamad Eid Hammadeh, Constanze Fischer-Hammadeh and Khaled Refaat Ali (2011) Assisted hatching in assisted reproduction: a state of the art. J assist Reprod Genet 28:119-128

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