BMIは精液の質にどのような影響を及ぼすか?

健康診断でBMIが高かったりメタボリックシンドロームと指摘される方、けっこういるのではないでしょうか?

BMIの異常が健康にさまざまな悪影響をもたらすことはすでに知られています。

BMIと精液の質の異常との関係についての研究も最近になって行われてきていますが、まだ統一した見解は得られていません。

今回のコラムでは、BMIと精液の質との関係について、論文を紹介させていただきます。

 

#1

Association between obesity and sperm quality

G.A.Ramaraju., et al, Andrologia. 2018;50:e12888.

対象と方法

・2016年に不妊クリニック(Visakhapatnam、インド)を訪れた1285人の男性を対象とした。

・肥満(BMI>30kg/m²)は201人(15.6%)だった。

・コンピュータを用いた精子分析(CASA)を用いて後ろ向きコホート研究を行った。

結果

肥満(BMI>30 kg/m²)では、

・精液量(-0.28ml)、総精子数(-48.36M)、精液濃度(-15.83M/ml)の減少を認めた。

・運動性に関しては、前進運動精子(-4.45μm/s)、総運動精子数(-5.50μm/s)、平均曲線速度(-2.09μm/s)、平均軌跡速度(-1.59μm/s)の減少を認めた。

・形態異常に関しては、精子頭部欠損(+0.92%)、頭部菲薄(+1.12%)、鱗状頭部(+1.36%)の増加を認めた。

結論

・肥満(BMI>30)では、精液の質の低下を招くことが示された。

・コンピュータを用いた分析(CASA)によっても、精子の質の低下を評価できることが示された。

 

#2

#Association between BMI and semen quality: an observational study of 3966 sperm donors

Jixuan M., et al, Human Reproduction, Volume 34, Issue 1, January 2019, P155-162.

 

対象と方法

・2013年1月~2018年4月の間、精液バンク(武漢市、中国)に集められた3966人(22-46歳)のドナー提供精液29949検体を対象とした。

・BMIをやせ(<18.5kg/m2)、標準(18.5-24.9)、太め(25-29.9)、肥満(≧30)の4つに分類し、精液量、濃度、総精子数、運動率、高速前進運動率、総運動精子数について、混合モデルを用いて用量反応分析を行った。

結果

・やせでは、精液濃度3.0%減少、総精子数6.7%減少、総運動精子数7.4%減少と、3つの項目に有意な影響を認めた。

・太めでは、精液量4.2%減少、総精子数3.9%減少、総運動精子数3.6%減少であった。

・肥満と精液の質低下についての関係は、今回の研究では明らかではなかった。

結論

・肥満だけではなくやせでも、精子の質の低下の一因となることが示された。

考察

#1では、肥満が精液所見に悪影響を与えることが、コンピュータの測定分析によっても示されたことがわかります。

従来の顕微鏡を用いた測定方法では人為的な誤差のリスクが考えられていましたが、コンピュータによる分析でも精子の質の低下が明らかとなりました。

さらに、精子の運動率や形態異常との関係についての研究はまだ少数でしたが、今回の研究によってそれらについても悪影響を及ぼすことがわかりました。

コンピュータを用いた研究がこれからも多数行われ、本研究を裏付けることが期待されます。

 

#2では、BMIが高値の人だけでなく低値の人についても、精液の質が低下する可能性について示されたことは、大変注目すべきと思います。

本研究結果では、BMI高値の人よりも低値の人の方が、精液の質の低下の程度が大きいという結果となっていますが、中国人という単民族の精液ドナーを対象としていることや、体重は初回のみ測定し、その後の体重変化については考慮していないことに留意し、今後さらなる研究報告が期待されます。

 

いかがでしたでしょうか。

太っている人も、やせの人も、標準体重を維持することが精液の質のために重要と考えます。

ぜひ皆さん、改めて体重コントロールを見直してみてください。

 

高輪医師部 吉

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