高濃度ヒアルロン酸移植用培養液について

今回は高濃度ヒアルロン酸含有培養液についてご紹介します。

高濃度ヒアルロン酸含有培養液は胚移植専用の培養液で、名前の通りヒアルロン酸という成分が
従来の移植用培養液よりも豊富に含まれています。粘性があるのが特徴的な培養液です。
では、ヒアルロン酸が豊富に含まれているとどんな効果が期待できるのでしょうか?

ヒアルロン酸はヒトの生体内に存在する分子で、わかりやすい例を挙げると皮膚や関節の構成成分の一つです。
女性の子宮内膜にも存在していて、受精卵の着床時期になると発現量がピークに達します。
受精卵と子宮内膜にはそれぞれヒアルロン酸にくっつくヒアルロン酸受容体というものが発現していて、
ヒアルロン酸を介して受精卵は子宮内膜に接着します。

 

 

 

 

 

つまり高濃度ヒアルロン酸含有培養液は受精卵が着床するのを助ける糊のような役割を果たし、
受精卵が子宮内から排出されるのを防ぐ効果が期待できると考えられています。

医学的根拠に基づいた医療の有効性評価を行う国際的な組織であるコクランの報告では、
高濃度ヒアルロン酸含有移植培養液(0.5 mg/ml)とヒアルロン酸が低濃度、または含有されない
培養液とを比較したときに出生率が改善し、流産率も減少すると結論付けています。
ヒアルロン酸なし培養液の出生率が33%だとすると、ヒアルロン酸ありの培養液の場合、
出生率は37-44%になると推定されるそうです。

高濃度ヒアルロン酸培養液を用いた胚移植は今年の4月から開始された保険診療の適応にもなっています。
対象は、過去の胚移植で妊娠不成功であったことなどにより医師が必要と認めた場合となります。

新鮮胚移植、凍結胚移植どちらでも使用できますが、胚移植前日に培養室での準備が必要となりますので、
ご希望される場合は胚移植スケジュールを立てる際に医師とご相談ください。
また、ご不明点などある方はお気軽に当院スタッフにお申し出ください。

お子様を望む皆様のご期待に添えるよう培養部一同日々精進して参ります。

京野アートクリニック仙台

培養部 臼田 薫

参考文献
Heymann D, Vidal L, Or Y, Shoham Z. Hyaluronic acid in embryo transfer media for assisted reproductive technologies.
Cochrane Database Syst Rev. 2020;9(9):CD007421. Published 2020 Sep 2.

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